SiC(炭化ケイ素)は次世代パワー半導体として期待される一方、その硬度および化学的安定性ゆえに加工難度が高い材料です。表面粗さが改善しない、あるいは加工後のダメージ(潜傷)が消えないといった課題に対し、プロセスエンジニアは日々厳しい最適化を求められています。
本記事では、SiC加工の最終仕上げであるCMP(化学機械研磨)の原理から、スラリーの選定、8インチ化に伴う最新の技術課題、量産・研究開発それぞれのフェーズに応じたプロセス選定の考え方までを解説します。
SiCは新モース硬度13、ヌープ硬度2400〜3000という極めて高い硬度を持つ素材であり、熱的・化学的に安定しています。この優れた物性はデバイス性能には寄与する一方、加工においては障壁となります。従来の機械的な研磨だけでは、表面に加工歪み(ダメージ)が残留しやすく、デバイス特性を劣化させる要因となるためです。
SiCウェハを鏡面に仕上げるためのプロセスは、インゴットからの「切断(スライシング)」、形状や厚みを整える「研削・ラッピング」、表面粗さを改善する「機械研磨(ポリシング)」を経て、最終仕上げの「CMP」へと進むのが一般的です。近年では能率向上のため、ダイヤモンド砥粒を成型した「固定砥粒定盤」を用いた加工手法も採用されています。
SiCの量産化に伴い、8インチ(200mm)への大口径化が進んでいます。大口径ウェハは薄化される傾向にあり、工程間の搬送において「割れ」のリスクが高まります。また、ウェハの反り(Warp/Bow)が発生すると面内均一な研磨が困難になるため、CMP工程だけではなく、バックグラインド(BG)やラッピングといった前工程を含めた一貫した応力制御(ストレスリリーフ)が重要となります。
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SiC用CMPスラリーには、主に二つのタイプが存在します。一つは機械的作用を強めた「強酸化剤型スラリー」で、研磨能率の向上が期待されますが、表面粗さの管理に注意が必要です。もう一つは「触媒反応型スラリー」で、化学的なアプローチにより平滑な表面を目指す際に選定されます。量産現場では、加工時間と要求品質のバランスから、これらのスラリーを目的別に使い分けるのが一般的です。
能率と平坦性の両立を目指す手法として、特性の異なるスラリーを組み合わせた「二段CMPプロセス」が検討されます。第一段階(一研)でダメージ層を除去し、第二段階(二研)で仕上げ研磨を行うことで、表面粗さ(Ra)の改善を図る構成です。これは多くの製造現場で参照されている手法の一つです。
SiCは結晶方位によって化学反応性が異なります。(000-1)C面は(0001)Si面に比べて研磨レートが高くなる傾向があります。これは、OHラジカルとの反応性やSi-C結合の切断速度の差によるものです。プロセス設計時には、各面方位の特性を理解した上で研磨条件を調整することが求められます。
エピタキシャル成長の前段階として仕上げる際、Ra(表面粗さ)は重要な指標です。AFMによる観察で、結晶面と研磨面のズレに由来する「原子ステップ」が規則正しく並んでいる状態が理想的とされています。
表面には見えない内部ダメージ「潜傷」は、後工程で欠陥を誘発します。光学顕微鏡では発見困難な場合があるため、表面粗さだけでなく、表面下の結晶性が保たれているかを評価することが欠かせません。
突発的な「異常傷(非定常スクラッチ)」は、砥粒の凝集だけではなく、エッジ(端部)から発生したSiCのチッピング破片が巻き込まれることで発生することがあります。これを抑えるためには、CMP前のエッジプロファイリングなどの前工程管理が、良品率向上のための重要な手段となります。
CMPの利用には排水処理等の環境負荷が伴います。コスト低減(CoO)と環境配慮の両立が、今後の製造プロセス構築において重要な焦点となっています。
CMPの代替技術として検討が進んでいるのが、プラズマ研磨(PPDE)です。これはイオン化したガスを用いて非接触で表面を除去する技術です。廃液処理が不要なため、環境負荷低減の手段として期待されています。
SiCウェハを適切に加工するためには、自社の生産規模や開発フェーズに応じて最適な手法を選択することが重要です。
量産工程においては、プロセスの均一性と運用コストのバランスが重視されます。枚葉式システムや、環境負荷を低減するクローズドなプロセス選定などが、安定供給に向けた検討対象となります。
新デバイスの試作や異形ウェハの評価など、先行開発段階においては、受託加工の活用が選択肢となります。薄化されたウェハのハンドリングからCMPまでを一貫して行う体制は、破損リスクを抑え、評価期間を短縮するための手段として有効です。
機密性の高い検証を自社内で行いたい場合、卓上型CMP装置が検討されます。省スペース設置が可能で、角チップ等の特殊形状や様々なスラリー配合を試験できるため、量産への移行準備やプロセス評価に適した装置構成となっています。
本記事では、SiC研磨の基礎原理から、量産・研究開発それぞれの視点での手法選定までを解説しました。物理的な研磨と化学的なCMPプロセスの理解を深め、生産規模やフェーズに応じた手法を選定していくことが、安定したデバイス製造には不可欠です。
「現在の量産技術」と「試作フェーズに適した受託・卓上型装置」といった選択肢を比較検討し、自社のラインに適したプロセスを構築していく姿勢が求められています。
研究開発からプロセス開発、小規模量産までを見据えたシリーズ。チップサイズから300mmまで、用途に合わせて段階的に検討しやすい構成です。
| ウェーハ サイズ |
チップサイズ 〜300mm |
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200〜300mmの中規模〜大規模量産を見据えたシリーズ。安定した生産体制を重視するCMP工程で比較しやすい領域です。
| ウェーハ サイズ |
200〜300mm |
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300〜450mmの中規模〜大規模量産を見据えたシリーズ。大口径ウェーハや大型基板の高精度加工を重視する場合に比較しやすい領域です。
| ウェーハ サイズ |
300〜450mm |
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