SOI向けCMP技術の基礎知識

バルクシリコンとは異なる、SOI特有の課題をどう乗り越えるのか。ここではSOI向けCMPの基礎から、スラリーや研磨パッドの選定、エンドポイント検出といった具体的なプロセス条件までを体系的に網羅します。

さらに、薄膜シリコン層の均一性確保や欠陥低減、ディッシング制御といった現場レベルの課題対策も詳述。半導体プロセスの最適化を目指すエンジニアの方へ、実践的な知識をお届けします。

SOI向けCMPの基礎知識

SOI(Silicon On Insulator)ウェーハの構造

SOI(Silicon On Insulator)ウェーハは、通常のバルクシリコンウェーハとは異なる3層構造を持つ特殊な半導体基板です。最上層には薄いシリコン活性層(Device Si層)があり、その下にBOX層(Buried Oxide:埋め込み酸化膜)と呼ばれる絶縁層、さらにその下にベースシリコン基板が配置されています。

この構造により、デバイスが絶縁層上に形成されるため、通常のシリコンウェーハと比較して消費電力の低減や高速動作、放射線耐性の向上といった優れた特性が得られます。特にスマートフォンやIoTデバイス、高性能プロセッサなどの先端半導体デバイスにおいて、SOIウェーハの需要が高まっています。

SOIウェーハ製造におけるCMPの役割

SOIウェーハの製造工程では、CMPが極めて重要な役割を果たします

SOI製造においてCMPが必要とされる主な理由は、BOX層との界面平坦化、活性層の厚み制御と平坦化、そして後続のリソグラフィー工程の精度向上です。特に薄膜SOIでは、デバイス層の厚さが数十〜数百ナノメートルと極めて薄いため、CMPによる精密な厚み制御が不可欠となります。各界面や表面の平坦性・均一性は、後続工程での歩留まりやデバイス性能に直結するため、SOI製造の成否を左右する重要工程と言えます。

バルクシリコンCMPとの違い

SOI CMPとバルクシリコンCMPの最も大きな違いは、研磨する材料の複雑さと要求される精度レベルにあります。バルクシリコンCMPでは単一材料の研磨が中心ですが、SOI CMPではシリコン層とBOX層という異なる材料を扱う必要があります。

特にSOI CMPでは、薄いシリコン活性層を研磨する際にBOX層への到達を防ぎながら均一に研磨する高度な制御が求められます。このため、使用されるスラリーの選定、研磨圧力や回転速度の最適化、エンドポイント検出技術などがバルクシリコンCMPよりも厳密に管理されます。また、SOIの活性層は非常に薄いため、わずかな研磨量の誤差がデバイス特性に大きく影響するという点も大きな違いです。

SOI CMPのプロセス技術

SOI CMP特有のプロセス条件

SOI CMPでは、薄膜シリコン層の厚み均一性と表面平坦性を両立させるため、バルクシリコンCMPとは異なる精密なプロセス条件が要求されます。研磨圧力は通常1〜4 psi程度と比較的低めに設定され、過度な研磨による層の破壊を防ぎます。

研磨パッドとウェーハの回転速度も重要なパラメータで、相対速度を調整することで研磨レートと均一性を制御します。また、スラリー流量や研磨時間も厳密に管理され、特に活性層が薄い場合は数秒単位での制御が必要になることもあります。プロセス温度も研磨特性に影響するため、装置によっては温度制御機能を持つものもあります。これらの条件を最適化することで、SOI特有の薄膜の均一性と欠陥の少ない表面品質を実現します。

使用されるスラリーの種類と選定基準

SOI CMPで使用されるスラリーは、砥粒と化学薬品から構成され、その選定がプロセス品質を大きく左右します。代表的な砥粒としては、コロイダルシリカ(二酸化ケイ素)や酸化セリウムが使用され、粒径は通常数十〜数百ナノメートルの範囲で選ばれます。

SOI CMPでは、シリコン活性層の研磨に適した高選択比スラリーが重要です。これは、シリコンに対する研磨レートが高く、BOX層(酸化シリコン)に対する研磨レートが低いスラリーで、オーバーポリッシュを防止する役割を果たします。また、スラリーのpH値や添加剤の種類によって、化学的エッチング作用と機械的研磨のバランスが調整されます。近年では、欠陥低減や環境負荷軽減を目的とした新しいスラリー組成の開発も進んでいます。

研磨パッドの選定ポイント

研磨パッドは、SOI CMPの品質と効率を決定する重要な消耗品です。パッドの硬度、表面構造、材質によって研磨特性が大きく変わるため、プロセス要件に応じた適切な選定が必要です。

SOI CMPでは、平坦性重視の硬質パッドと均一性重視の軟質パッドを使い分けるケースがあります。硬質パッドはグローバルな平坦化に優れる一方、軟質パッドはウェーハ全面での均一な研磨に適しています。また、パッド表面の溝(グルーブ)パターンはスラリーの供給と排出に影響し、研磨効率や欠陥発生率を左右します。パッドの摩耗管理も重要で、定期的なコンディショニング(表面再生)やパッド交換のタイミングを適切に管理することで、安定したプロセス品質を維持できます

エンドポイント検出技術

SOI CMPにおいて、エンドポイント検出は研磨を適切なタイミングで停止させるための極めて重要な技術です。特に薄膜シリコン層を扱うSOIでは、わずかな研磨量の誤差がデバイス特性に影響するため、高精度なエンドポイント検出が不可欠となります。

主な検出手法としては、光学式エンドポイント検出があります。これは研磨中のウェーハ表面に光を照射し、反射光の干渉パターンの変化から膜厚や材料の変化を検出する方式です。また、モーター電流値のモニタリングや摩擦係数の変化を利用する方法もあります。SOI特有の課題として、BOX層への到達前に研磨を停止する必要があるため、複数の検出手法を組み合わせたマルチセンサー方式が採用されることもあります。これにより、オーバーポリッシュの防止と目標厚みの達成を両立させることができます。

SOI CMPにおける主な課題と対策

薄膜シリコン層の均一性確保

SOI CMPの最大の課題の一つが、薄膜シリコン活性層の厚み均一性の確保です。デバイス層の厚さが数十〜数百ナノメートルと極めて薄いため、ウェーハ面内でのわずかな研磨量のばらつきが、デバイス特性の不均一や歩留まり低下に直結します

この課題に対する主な対策としては、研磨圧力分布の最適化が挙げられます。CMP装置のヘッド構造やバッキングフィルムの設計を工夫することで、ウェーハ全面に均一な圧力を加えることができます。また、マルチゾーン圧力制御を持つ装置では、ウェーハ中心部と周辺部で圧力を個別に調整し、より高い均一性を実現します。さらに、スラリー流量の最適化や研磨パッドのコンディショニング頻度の管理も重要で、これらを総合的に制御することで、ウェーハ面内の厚みばらつきを数%以内に抑えることが可能になります

スクラッチ・欠陥の低減

SOI CMPでは、研磨プロセス中に発生するスクラッチ(引っかき傷)やパーティクル起因の欠陥が、デバイス歩留まりに深刻な影響を与えます。特に薄膜デバイス層では、わずかな表面欠陥でもデバイス動作に影響する可能性があるため、欠陥密度の徹底的な低減が求められます。

スクラッチ低減の主な対策は、高純度スラリーの使用です。スラリー中の凝集粒子や異物を除去するため、0.1μm以下のフィルターで濾過されたスラリーが使用されます。また、研磨パッドの選定も重要で、表面が滑らかで硬い粒子を含まないパッドを選ぶことで、スクラッチリスクを低減できます。さらに、CMP後の洗浄プロセスの最適化も不可欠で、メガソニック洗浄やブラシ洗浄を組み合わせることで、残留パーティクルを効果的に除去します。装置のメンテナンスとクリーンルーム環境の管理も、欠陥低減には欠かせない要素です。

BOX層(埋め込み酸化膜)露出の防止

SOI CMPにおいて、BOX層の露出は致命的な不良となります。シリコン活性層を研磨しすぎると下のBOX層(酸化シリコン)に到達してしまい、その部分ではデバイスが形成できなくなるため、厳密な研磨量制御が必要です。

BOX層露出を防ぐ主な対策は、高選択比スラリーの採用です。シリコンに対する研磨レートが高く、酸化シリコンに対する研磨レートが低いスラリーを使用することで、万が一BOX層に到達しても研磨が遅くなり、ダメージを最小限に抑えられます。また、高精度なエンドポイント検出システムの導入も重要で、光学式やモーター電流値モニタリングなど複数の手法を組み合わせることで、BOX層到達前に確実に研磨を停止できます。さらに、研磨レシピの最適化により、初期の厚み分布データをもとに研磨時間を調整する手法も有効です。

ディッシング・エロージョンの制御

SOI CMPでは、ディッシング(パターン内の凹み)やエロージョン(パターン密度に応じた局所的な削れ)といった平坦化不良が課題となります。特にデバイス形成後のCMPでは、配線パターンやトレンチ構造の存在により、これらの現象が顕著に現れます。

ディッシング・エロージョンの制御には、研磨パッドの硬度調整が効果的です。適度な硬さのパッドを選ぶことで、パターン部と非パターン部の研磨レート差を小さくできます。また、研磨圧力の低減や研磨速度の最適化により、局所的な過研磨を抑制することも重要です。さらに、ダミーパターンの配置によりパターン密度を均一化する設計手法や、多段階研磨プロセス(粗研磨と仕上げ研磨の使い分け)を採用することで、平坦性を大幅に改善できます。これらの対策を組み合わせることで、数十ナノメートル以下のディッシング量に抑えることが可能になります。

研磨用途別
CMP装置おすすめ3選
研究開発用の基板
試作したい
北川グレステック
DCMシリーズ
北川グレステックのCMP装置 DCMシリーズ
引用元:北川グレステック公式HP
(https://www.kitagawagt.co.jp/product/925/)
特徴

柔軟性と高い機械剛性を備え、角チップも取り付け可能。金属・酸化・窒化膜、ベアウエハはもちろん材料や関連商品などの研究開発向けに、試作の細かな調整がスムーズに行える卓上型CMP装置。

ウェーハ
サイズ
チップサイズ
~150mm
\研究開発用の基板に/詳細を公式HPで
確認する
安定した量産体制
確立したい
荏原製作所
F-REX300X
荏原製作所のCMP装置 F-REX300X
引用元:荏原製作所公式HP
(https://www.ebara.co.jp/products/details/FREX300XA.html)
特徴

自動研磨機能と4つのテーブルを使ったデュアルモジュール構造で効率的な半導体製造の歩留まり向上を実現。安定した品質と高い生産効率を提供。

ウェーハ
サイズ
~300mm
\生産体制の安定に/詳細を公式HPで
確認する
大型基板の加工精度
向上させたい
岡本工作機械製作所
PNX1200
岡本工作機械製作所のCMP装置 PNX1200
引用元:岡本工作機械製作所公式HP
(https://www.okamoto.co.jp/polishing-machine)
特徴

大型基板の高密度配線やTSV(貫通電極)プロセスの複雑な構造に対応した450mmウェーハ用では世界初※の全自動CMP装置。ポリッシュ取り代量の多い工程でも、安定した研磨性能。

ウェーハ
サイズ
~450mm
※参照元:岡本工作機械製作所公式HP(https://www.okamoto.co.jp/polishing-machine)
研磨用途別
CMP装置3選